【考察】フロントウイング『ISLAND』のすべて【ひまわり・投票げぇむ・SILENTWORLD】


この記事はTVアニメ『ISLAND』の考察記事ではなく、フロントウイング原作ゲーム『ISLAND』の考察記事となります。また『ISLAND』のシナリオライター・ごぉ氏が担当している『ひまわり』『投票げぇむ』『SILENTWORLD』は『ISLAND』と世界設定・人物関係が地続きで続いています。
TVアニメ『ISLAND』あるいは原作ゲーム『ISLAND』だけ既知で、この記事を閲覧しても内容の把握はできません。

『ISLAND アニメ化記念版』に付属している設定資料集『ISLAND 解体新書』に記載されている設定に関しては意図的に省いている箇所があります。

この記事は2018年8月15日投稿時点の情報をもとに考察したものとなります。
それ以降に確認された情報に関しての加筆修正はしておりません。ご了承下さい。


はじめに

ひまわり

『ひまわり hi・ma・wa・ri』(以下、ひまわり)とは同人サークル・ぶらんくのーとがC73で頒布した同人ゲーム。のちに幾つものコミカライズ・ドラマCD・移植がされたSF恋愛アドベンチャー。

あらすじ
2048年、人類の夢を運ぶべく開発された高々度旅客機が墜落し、多くの犠牲者が出た。同時に英雄的宇宙飛行士・雨宮大吾を死亡事故で失い、この事件以降、宇宙開発は停滞期に突入することとなる。
2年後の2050年、墜落事故の唯一の生存者である日向陽一は高校生となるも、事故のショックで事故以前の記憶を失っていた。雨宮大吾の息子である雨宮銀河と共に「宇宙部」を結成し、ロケットを作る毎日を送っていたが、そんなある日の夜、陽一の前に空から謎の少女・アリエスが落ちてくる。
アリエスもまた、墜落のショックで記憶を失っていた。
アリエスを他人とは思えない陽一は彼女を匿い、二人で生活を始めることとなるが……。

同人ゲームひまわりには18禁版全年齢版があります。また前日譚である外伝小説こもれび himawari/Episode Zero - the sunny garden -かげろう another side of himawari / episode 2 - the gloryous sky -がC74とC75にて頒布されましたが、現在はGoogle PlayとiTunesで配信されています。

PS2&PSPへ移植されたひまわり - Pebble in the Sky - Portableでは本編の他にボイス追加と上記の外伝小説二冊が収録されています。2015年には『ISLAND』を担当した空中幼彩氏によってキャラクターデザインを一新したリファイン版ひまわり - Pebble in the Sky -が発売されました。こちらは主人公含めたフルボイス化や『SILENTWORLD』に関する要素も含まれた用語集・年表などが追加されています。
これらの作品を踏まえてひまわりプレミアムファンブックを読むことで、ひまわりの世界をより深く理解できるようになっています。

またひまわり アクアアフターは本編のアクアルートの後日談となります。アクアとは『ひまわり』のヒロインの一人であり『ひまわり アクアアフター』はアクアのファンディスクですが、本当にアクアが好きで、彼女がどのような人間なのかを理解していなければプレイは推奨しません。

はじめて『ひまわり』という作品に触れるなら「18禁版(全年齢版)+外伝小説+アクアアフター」か「リファイン版(移植版)+アクアアフター」を推奨します。

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投票げぇむ あなたに黒き一票を

『投票げぇむ』は原作はごぉ氏、作画たつひこ氏によるサスペンス漫画。全三巻。

あらすじ
死を賭けた投票ゲーム。教室は地獄となる。
遊びだと思われたクラス内人気投票。しかし人気のなかった者が、次々と死んでいく。恐怖に陥るクラスで、何者かによって人気投票は続けられていく…。この投票ゲームを生き抜いて、真相を暴くことができるか!?

『SILENTWORLD』のような物語の直接的な繋がりはなく、一見すると同じ世界観ではないように思えるが、『ISLAND』で語られた中宮末治の著書「革命の灯」や『ISLAND』に関係したひとつの仮説が語られていたりと、こちらも『ISLAND』の補完的役割を持っています。

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ISLAND

2018年夏にTVアニメが放映された『ISLAND』の原作ゲーム。TVアニメ版はアニメオリジナル展開となっており、キャラクターの掘り下げを中心に再構成されています。

あらすじ
本土より遠く離れた南の島、“浦島”。
そこは豊かな自然に恵まれた、まさに楽園。
「いつまでも――こんな時間が続けばいいのに」
しかし複雑な過去を抱え込んだこの島は、歴史から静かに消え去ろうとしていた。
島の風土病“煤紋《ばいもん》病”による本土との確執。
放棄され廃墟と化した“海上ステーション”。
五年前に“浦島御三家”を襲った三つの事件。
子供たちの間でまことしやかに囁かれる“神隠し”の噂。
そして、島に残された古の“伝承”――。
「お話ししましょう。この島に伝わる、悲恋物語を――」
島を救う鍵となるのは、御三家に属する“三人の少女”たち。
しかし彼女らにはまだ、島の行く末を変える力はない。
「この島はもう終わりだよ。救われっこねー」
そんな島に、一人の青年が流れ着く。
「……――今は、何年だ?」
未来から来たと主張するその青年は、島の因習なんぞくそ食らえとばかりに、
未来を変えるために孤軍奮闘し始める。
「待たせたな、俺が来たからにはもう大丈夫だ!」
だが彼には、別の目的があった。
果たして三人の少女たちは、この島は、世界は、
彼によってどう変えられていくのか――。

フロントウイング15周年記念作品として2016年に発売。以後PS4/PSVに移植されました。こちらの移植版はPC版と大きく変わりはないが、あるエンディングの変更、加筆、画質・音質の向上といった大幅な変更がされています。

ISLAND アニメ記念版には設定資料集『ISLAND 解体新書』が付属されており、はじめて『ISLAND』に触れる方はPS4版設定資料集を目的とするならばアニメ記念版を推奨します。

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SILENTWORLD

『SILENTWORLD』とは『ひまわり』と『ISLAND』の物語を補完する役割を持ちながら、単体で完結する『ひまわり』と『ISLAND』の外伝作品。電撃G'sマガジンで連載され、挿絵のフルカラー化、前日譚と後日談を追加した単行本がPC版と同時発売された。

あらすじ
どこにでもいるふつうの高校生、羽鳥健人。
彼にはある秘密があった。
――時間の流れを自在に操る能力――
それが健人の秘密だった。
自分がこの能力を使えることの「意味」を知りたい、健人はずっとそう考えていた。
そんな折、健人はある「通り魔」の存在を知る。
気配も感じさせずに人々を襲うその通り魔に対し、健人にはある予感があった。
この通り魔は、自分と同じ能力を持っている――と。
誘われるように通り魔を追う健人の前に、1人の少女が現れる。
その少女もまた、健人と同じ能力を持っていた――。

『ISLAND』で登場したリーン・カーネーションと彼女が語った「人工レゾネーター計画」。『ひまわり』の西園寺グループとアリス財団。『ISLAND』の1999年よりも未来で、『ひまわり』の2050年よりも過去である2015年──宮浦と浦島の二つの舞台にて描かれる本作は、まさに『ISLAND』と『ひまわり』の外伝であり、補完であり、せつなとえいえんの旅の続きなのだ。
単行本は数千円のプレミアがついているので、コレクター目的以外ならKindleでの購入を推奨。

SILENTWORLD
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ここから先は『ひまわり』『投票げぇむ』『ISLAND』『SILENTWORLD』の重大なネタバレが含まれています。未プレイ・未読での閲覧は自己責任でお願いします。



時間膨張波

相対性理論によれば、物体の移動速度が光速に近づくほど、その物体に流れる時間は遅くなる。対して地球の自転速度は地表ではマッハを超え、公転速度はその更に数倍となる。どこを原点とするかによるが、太陽系あるいは銀河系と広く見れば宇宙は光に匹敵する速度、あるいは光よりも速い速度で動いていると考えられる。だが宇宙が光に近い速度で移動していても、ヒトは時間の流れが遅くなっていることを観測することは出来ない。何故ならば観測者を含めて時間の速度は遅くなっているからである。この現象を量子論を用いて一つの事象として捉え説明しようとした。それが時間膨張波《Time dilation wave》。別名、時空震である。

宇宙本来の時間

アリス財団※は、時間膨張波に対して通常よりも強く共鳴する物質を発見することで本来観測不可能な時間膨張波の存在を観測した。その物質はヒトの心筋でタンパク質として合成されており、歳を取るにつれて蓄積されていることが判明した。このタンパク質をコードしている遺伝子を、時間膨張波と共鳴《resonator》していることからレゾネーター遺伝子と呼称する。
※アリス財団とは、難病奇病に冒された患者に対する病気の研究や治療法の開発を行っている福祉と厚生を目的とした財団法人。代表は有沢英人。世界各地に傘下の研究所が点在しており本部はスイスに置いていたが2016年以降に東京へ移動している。上層部には西園寺グループ・CEOである西園寺暁、リーン・カーネーションのコードネームを持つ金城鈴が所属している。

レゾネーター遺伝子の発見によって、本来観測不可能であった時間膨張波の存在が発見された。これによって時間膨張波は常に宇宙全体に降り注いでおり、原子は時間膨張波を受けることで振動している。また時間膨張波の振動は熱エネルギーに変換されず、重畳共鳴を引き起こしてその振動速度を上げている事が発覚した。

レゾネーター※は時間膨張波を検出する素質を持っている。アリス財団はレゾネーター遺伝子によって検出した時間膨張波を重ね合わせの原理によって相殺する事ができれば、時間膨張波の影響を受けていない宇宙本来の時間を観測することができるのではないかと考えた。そして宇宙本来の時間は過去に流れていると考えた黒須玲奈は、現在から過去へ遡りやり直したいという目的ために、浦島の海上ステーションに所属している研究所のひとつ・アリス財団第九研究所にて時間膨張波逆位相発生器《Time dilation wabe Antiphase Generator》。別名、時空震キャンセラー。または英語表記の頭文字をとってタグと呼ばれる装置を開発した。
※レゾネーター遺伝子を持ったヒトのことをレゾネーターと呼ぶ。レゾネーターは基本的に黒須玲奈およびその息子の羽鳥健人や、デザイナーズチャイルドである人工レゾネーターをはじめ先天性によって生まれてくる。しかしレゾネーター遺伝子をコードしているタンパク質は心臓にあるため、普通の人類がレゾネーターの心臓を移植する事で後天的にレゾネーターとなる事は可能である。ただしアリス財団によって人工的に造られたレゾネーターは合計26名しかおらず、その多くが虐殺されている。そのため後天性のレゾネーターは金城鈴のみ確認されている。

タグは時間膨張波の相殺を目的として造られたが2015年時点では高倍率の動作は安定しておらず、それと同時に人工レゾネーターの素質が低く時間膨張波の完全な相殺は出来なかった。しかし、生まれながらにしてレゾネーター遺伝子を持っていた黒須玲奈の息子・羽鳥健人は、人工レゾネーターよりも高い素質を持っており、レゾネーターの素質と適性に左右されやすいプロトタイプのタグを用いることによって102400倍の高倍率動作に成功した。これによって羽鳥健人は三十五年を掛けてではあったが一秒だけ過去へ遡ることに成功した。つまり、タグによって一秒だけであっても過去に遡ることが出来たということは、時間膨張波の影響を受けていない宇宙本来の時間は未来から過去に流れていることが判明したことになる。

宇宙誕生と終焉

時間膨張波を受けることによって原子は振動している。ならば原子の振動を完全に静止させることができれば、時間膨張波の影響を受けない本来の時間を観測することが出来ると考えられる。しかし原子は絶対零度においても不確定性原理のため静止せずに振動している。これを零点振動と呼ぶが、もしも零点振動さえ完全に静止させることができれば、原子と電子が衝突して一種の対消滅が発生する。御原玖音は、この現象を時間膨張波の影響を受けなくなったことによって、原子に流れる時間が過去へと遡ったことで、現在の時間軸からは消滅したように見えるからであると考えた。そして、対消滅によって過去へと遡った原子は、宇宙の誕生まで遡り、時間膨張波の影響を受けてプランク時代で発生する。これが対生成であると考えた。

もしも不確定性原理によって振動している量子の振動を完全に予測することが出来れば、時間膨張波の影響を受けていない宇宙本来の時間を観測することが出来ると考えた。そして、近い未来において量子暗号の安全性を否定しかねない論文※が発表されており、この論文によれば確率でしか定義できない量子の振動を完全に予測可能だという。またこの論文が発表される以前に量子暗号を前提としたコンピューターネットワークの大規模改修が相次いでおり、この論文の信憑性は高いものだと考えられる。もしも、この論文の内容が真実なら、現在発見されている冷凍睡眠装置《コールドスリープマシン》を、零点振動を重ね合わせの原理によって相殺するように改良して原子の完全静止を行えば過去へ遡るタイムマシンが発明されることだろう。
※『ISLAND 解体新書』のメモ「研究者の愚痴。」から



遺伝子欠損

ヒトは何万の遺伝子を持っているが、その全てが常に働いているわけではない。生きる上で不要な遺伝子は普段は眠りに就いており、仮にその部分が機能を喪失しても問題なく生活していける。そして進化の過程で塩基配列が変異し、眠りに就いていた遺伝子が喪失してしまった。そのような遺伝子群《genomic island》をヒトは失ったのではないか。この失われた遺伝子群のことを遺伝子欠損《missing link》と呼称する。

なお西園寺グループ※が主導した「星の娘」《スターチャイルド》プロジェクトによって生まれたデザイナーズチャイルドのアルビノや、浦島における媒紋病は一種の遺伝子疾患であることから、遺伝子欠損には含まないものだと考えられる。
※西園寺グループとは、九州に拠点を構える財閥。CEOは西園寺暁、現社長は西園寺暁の長男・西園寺明が務める。グループの内部には西園寺グループ宇宙開発部、通称SSDD(saionji space development department)があり、「星の娘」プロジェクト、かぐや計画、百花構想といったプロジェクトもこの西園寺グループが主導したものである。またコードネームに花の名前を用いることが多く、百花構想以前にも浦島の海上ステーションを設計・建造した際は「あさがお」と名付けている。

レゾネーター遺伝子

先程述べたレゾネーター遺伝子も、この遺伝子欠損のひとつである。レゾネーターはタグを用いることによって肉体に流れる時間の流れを速くする事ができ、非常に有益に感じられるが、時間膨張波に共鳴するタンパク質が心臓に蓄積されていくにつれて、肉体に流れる時間が遅くなり普通の人間よりも歳を取りにくくなる。またタグには自身の時間の遅れを自発的に補正する機能があり、これによってレゾネーターは普通の人間と同じ速度で生きることが出来る。

もしもタンパク質が異常に蓄積された状態でタグを外してしまうと、自身に流れる時間は静止してしまう。つまり、レゾネーター遺伝子はタグが無ければ自身の時間を静止させてしまうといいった弊害を持った遺伝子なのだ。しかし、レゾネーター遺伝子は遺伝子欠損のひとつであり、ヒトが本来持っていたはずの遺伝子だと判明している。ならば何故レゾネーター遺伝子をヒトは持っていたのだろうか。

アリス財団は外宇宙から放たれた遺伝子という種が地球に辿り着き、花開いたのがヒトという種であるという考えを持っており、レゾネーター遺伝子は何万年もの宇宙を航海する際に起きるDNAの経時劣化を防ぐために用意された機構なのではないかと推測したのである。そして、それを裏付けるかのように何万年もの宇宙を航海し、ヒトの起源が記憶された細胞が発見された。

ルナウイルス

ヒトは生まれながらにして46本の染色体を持っているが、この染色体の起源は外宇宙から飛来した”宇宙人”ともいうべき遺伝子が当時の地球の原核細胞的なものに寄生したものによるものである。しかし46人目の宇宙人は月へと不時着してしまった為、45人目が自身を複製して46人目を補完した。これがX染色体の起源である。そして、これら46名の原核細胞的なものが進化して現在のヒトとなった。そして月へ不時着した46人目の宇宙人がルナウイルス・ゲノムRNAである。

ルナウイルスの大きな特徴が高密度な記録の感染である。ルナウイルスは他45名と共に宇宙を何万年もの旅を続けていたが、その旅の記憶を正確に保持し続けていた。レゾネーター遺伝子による一種の冷凍睡眠によって経時劣化は防ぐことは出来たが、レゾネーター遺伝子による冷凍睡眠には黒須玲奈を例に記憶の喪失が確認されている。つまり、外宇宙の航海の記憶喪失を防ぐ為にルナウイルスは存在していたのだと考えられる。遺伝子欠損の定義は進化の過程で淘汰された遺伝子のことであるが、ヒトとなる以前に失われた遺伝子も遺伝子欠損と呼ぶのなら、ルナウイルスも遺伝子欠損のひとつだと考えられる。



オーパーツ

現在発見されている冷凍睡眠装置をはじめとした、発掘された時代の文明レベルでは実現し得ない技術、あるいは現代に至っても実現できていない超技術《オーバーテクノロジー》を用いられた超古代文明の遺産をオーパーツと呼称する。

この星は約二万年周期で氷河期と間氷期を繰り返しており、その度に文明はリセットされている。超古代文明において人類は氷河期の脅威から生き残るために地下都市を造り出したが、超古代文明が滅亡したあとは地下都市は遺跡と化し、世界各地に点在している遺跡からオーパーツは発見されている。オーパーツが初めて発見されたのは臓器移植が行われたミイラだが、これは中国の臓器盗難事件およびナノマシン技術※に関係があると考えられる。また1999年時点で各地の遺跡から冷凍睡眠装置、電子回路、遠距離通信装置、宇宙船といったオーパーツが発見されているが、これらのオーパーツは、西園寺グループの研究内容と類似しているのである。
※『ISLAND 解体新書』のメモから

この星は、人口増加、食料枯渇、衛生環境の悪化、新種のウイルスの発見といった多くの問題を抱えている。そして氷河期が近づくにつれ氷と寒波の脅威も発生しており、この星は人類を滅ぼそうとしている。西園寺グループは、この星から人類を脱出させて外宇宙を旅する為に宇宙船の開発、冷凍睡眠技術の確立、宇宙病の研究を行っていた。そして最も優先して研究していたのが冷凍睡眠技術の確立であった。しかし、従来の冷凍睡眠技術には限界があり、その対策としてクローン技術を併用して、新たな個体に記憶を移植する方法を研究していた。それがルナウイルスを利用した「星の娘」プロジェクトであった。つまり、西園寺グループは冷凍睡眠装置の使用には記憶を喪失する欠点がある事を知っていたことになる。また、冷凍睡眠装置が外宇宙を旅するために開発されたものであると考えると、数十万年以上稼働しても一割も減っていない異常なエネルギーおよび耐用年数にも合点がいく。以上の事をふまえると、冷凍睡眠装置、電子回路、遠距離通信装置、宇宙船といったオーパーツは西園寺グループが研究・開発したものだと考えられる。

また、レゾネーター遺伝子を持つ黒須玲奈と、彼女が所持していたオリジナルのタグもオーパーツのひとつであるが、黒須玲奈はナノマシン技術、あるいは遺伝子欠損(宇宙人)を再生させるアメリカの研究機関※などの技術によって生まれた人類であると考えられる。オリジナルのタグと札の外見が類似しているが、緑色の装飾がないといった差異から、札とタグが類似しているのは偶然(ミスリード)であると考えられる。
※『かげろう』から



アカシックレコード

人間の脳には数百億個の神経細胞があり、それぞれが数千から一万ものシナプスで別の神経細胞と繋がっている。神経細胞はシナプスを介して下流に繋がった神経細胞に刺激を与え、刺激は更に下流へと伝播を繰り返していく。シナプスの数は増減するが神経細胞は歳を取るにつれ活動の少ない細胞から次々と死滅していく。そして死んだ細胞は自分の上流にある細胞の細胞死を誘発する。これは不要な細胞を効率的に死滅させるために脳に備わったプログラムである。そして人間は地球という生命体の神経ネットワークの一部※に過ぎず、成熟を迎えたこの星が不要な細胞を淘汰している。このプログラムによって、この星は約四万年周期によって文明は幾度もリセットされては発展しているのを繰り返しているのだと考えられる。
※『投票げぇむ』から

しかし、約四万年周期は文明だけではなく、人物・団体・地域までもが繰り返されている。現在と同姓同名の人物が約四万年前にも同じ場所で、同じ歴史を辿りながら生きて死んでいく。これがこの世界の秘密である。そして、この世界の秘密を解き明かす鍵こそがアカシックレコードである。

アカシックレコードとは、この世界の全ての事象を記録している概念のことであり、この世界はアカシックレコードに記録されたデータを再生したものに過ぎないというものだ。ならば、アカシックレコードに記録されたデータが再生し終えて、もう一度再生すれば同じ事は繰り返されるのだろうか。これにはそうだとする解釈と、そうでない解釈に分けられる。そして、そうでない解釈の場合、アカシックレコードは、再生を終えると再びアカシックレコードに書き戻され、そして再び読み出される際には、以前とは少しだけ違う形で再生される。つまり、人は死ぬと魂だけの存在となってアカシックレコードへと還り、そしてまた約四万年後に同じ魂を持って再びこの世に顕現すると考えられる。つまりは輪廻転生である。もしもアカシックレコードの存在が証明されれば、この世界は誰かが造り出した”おとぎばなし”の舞台のように考えられるだろう。



御原凛音

悲劇的な結末を迎え、犠牲となってきた多くの「りんね」達。この項目では『ISLAND 解体新書』で明かされずに終えたもう一人のリンネ・オハラと、描き下ろし小説「No Man’s Summer」で登場した少女の正体について掘り下げていくが『ISLAND 解体新書』をまだ読んでいない方に対して閲覧する前に警告します。

この項目には御原凛音という人物の印象を覆す設定が書かれています。これから先『ISLAND 解体新書』を読む予定がある方も、これから読み予定はないという方も、この項目だけは飛ばすことを推奨します。それでも読むという方は自己責任でお願いします。『ISLAND』という作品および御原凛音に対しての印象が変わってしまっても私は責任を負いません。警告は以上です。

今日からわたしの名前は

『ISLAND 解体新書』のメモに登場したリンネ・オハラの妹。彼女は姉の名前を騙ってタイムマシンの設計図のデータが入っているディスクを初めてアイランド・ユーラシアに持ち込んだ「冬編」のリンネ・オハラの祖先だと考えられる。

リンネ(メモ)は姉に、リンネ(玖音)は兄に媒紋病を発症していた身内がいたが、ふたりのリンネは媒紋病は共に発症はしなかった。これは媒紋病がX染色体の遺伝子異常が原因であり、リンネの父親には媒紋病の原因となるX染色体は存在していなかったが、母親には媒紋病の原因となるX染色体がひとつだけ存在していたことになる。つまりリンネ(メモ)とリンネ(玖音)の父親は媒紋病ではなかったが、母親は非進行性の媒紋病であったと考えられる。

No Man’s Summer

御原凛音は御原玖音と三千界切那の娘である。そして「未来予想図」END(PS4/PSV版は「軌跡と奇跡」END)と『ISLAND 解体新書』の描き下ろし小説「No Man’s Summer」で登場する少女。彼女の正体は御原凛音の娘である。

「No Man’s Summer」において御原凛音は1999年6月に冷凍睡眠装置から目覚めて装置を探しに行くまでに一年の期間を空けているが、これは彼女が御原切那との記憶を取り戻した後、妊娠していた事を自覚して出産するまで安静にしていたからだと考えられる。また「No Man’s Summer」と「未来予想図」ENDに登場する御原凛音の娘は媒紋病であることが示唆されている。もしも三千界切那と御原凛音の娘である場合、彼女が媒紋病に罹ることはない。そもそも「No Man’s Summer」は三千界切那が1999年ではなく2016年に目覚めた時代の物語であり、三千界切那と御原凛音は一度も邂逅していない。ならば残る可能性は媒紋病であった御原切那のみとなる。これらのことを踏まえると「夏編」および「真夏編」で三千界切那が御原凛音と出逢った時点で、御原凛音は御原切那との子供を身籠っていたことになる。

また御原凛音は冷凍睡眠装置によって御原切那と性交した記憶を失っているため「未来予想図」ENDは御原凛音自身も娘は三千界切那との間にできた子供だと思い込んでいる可能性が高い。それ以前に御原凛音にとって御原切那と三千界切那は同一人物だと思い込んでいるので、記憶を取り戻したところで不都合はないものだと考えられる。つまり、『SILENTWORLD』に登場した女将は御原玖音ではなく御原凛音の可能性が浮上する。御原凛音が女将だった場合娘は15歳となり、15歳という歳は一応いい歳だと言えるだろう。そもそも御原玖音は『SILENTWORLD』の時間軸ではタイムマシンを開発して世界を救うという夢のために歩み続けている。御原家の屋敷を自治体に任せて旅館にし女将として働く余裕はないものだと考えられる。この事から女将の正体は御原凛音であり、娘とは「No Man’s Summer」と「未来予想図」ENDに登場した御原凛音と御原切那の娘だと考えられる。



三千界切那

冷凍睡眠装置に乗って未来へと旅を続ける記憶喪失の青年。そして浦島に伝わる伝承の切那本人。三千界切那という名前は伝承の「せつな」が三千大千世界の守人と呼ばれていたことから御原凛音が名付けたものである。彼の詳細な年齢・本名・出身地はすべて不明となっている。

旅の中で幾度も「りんね」を失う歴史を繰り返したことで、冷凍睡眠装置によって記憶を失っても蓄積された経験は身体に刻み込まれていった。身体に刻まれた経験が記憶を呼び起こし「真夏編」では記憶を失うことなく冷凍睡眠装置から目覚める。「真夏編」の御原凛音を救うことに成功して、もう一人の「りんね」である御原玖音と共に世界を救うという夢を追ってタイムマシンを求めて再び未来へと旅する。世界の秘密を知った後の三千界切那の目的は、タイムマシンを手にしてこの世界の不幸の原因を知り、間違いを正すことで世界を救う。そしてすべての「りんね」を救い「真夏編」の時代へと戻ってきて家族と暮らすことである。

1999年8月15日

「夏編」と「真夏編」では切那が目覚めた日付は1999年8月15日だが、「晩夏編」(アニメ版『ISLAND』)では1999年7月、『ISLAND 解体新書』の描き下ろし小説「No Man’s Summer」では2016年春に目覚めている。これらの目覚めの違いには1999年8月15日という日付そのものが関係していると考えられる。

この星の1999年8月15日には磁気嵐※が発生しており、その影響かは不明だがみずがめ座δ流星群が観測されている。磁気嵐と同日に切那が目覚めていることには因果関係があると考えられる。つまり、本来ならば三千界切那は冷凍睡眠装置の連続稼働限界である二万年後の2016年に目覚める予定であったが、磁気嵐の影響で三千界切那は1999年8月15日に目覚めたものだと考えられる。御原玖音ことリンネ・オハラが、三千界切那よりも早く目覚めた理由も同様のものだと考えられるが、御原玖音が冷凍睡眠装置から目覚めた際には、三千界切那の冷凍睡眠装置は遺跡の内部にあったため影響しなかったものだと考えられる。つまり、磁気嵐というこの宇宙からもたらされた影響によって、この星の輪廻の歴史は変動していると考えられる。
※『SILENTWORLD』から

また三千界切那が鎌倉幕府設立年号を間違えていたが、年号が1192年から1185年へ改訂されたのは2007年頃からである。この知識の差異は「No Man’s Summer」のように2007年以降に目覚めた三千界切那が覚えていた、あるいは一番最初の出発点で覚えていた知識だと考えられる。年代に関しての裏設定はTVアニメ『ISLAND』のBlu-ray特典「ISLAND アフターストーリーノベル」にて書き下ろされる予定とのことなので、これに対する回答を得たい方はBlu-rayを購入することを推奨する。

第21次人工レゾネーター計画

金城鈴から三千界切那が第21次人工レゾネーター計画の関係者であることが明かされている。しかし、人工レゾネーター計画は宗教団体が行っていたものと、黒須玲奈がアリス財団第二研究所を利用して行っていた二つに分けられる。宗教団体による人工レゾネーター計画は第107次は黒須玲奈、第108次は羽鳥健人が関係していたが、第107次時点の1999年に宗教団体は壊滅している。アリス財団による人工レゾネーター計画は2010年頃から第26次まで行われており、第12次がサイレントキラー、第26次が瀬良絵里花である。

三千界切那は冷凍睡眠装置から目覚めた合間合間を普通に過ごしているが、歳がとっているようには見えない。これはレゾネーターの特徴のひとつであり、三千界切那が第21次人工レゾネーター計画で造られた、あるいは遺跡から発掘された人類であると考えられる。

三千界切那がアリス財団によって造られた人工レゾネーターである場合、生み出されたのは2010年頃となる。その後、西園寺グループと関わりを持ち、開発していた冷凍睡眠装置の実験動物《モルモット》として約二万年の眠りについたと考えられる。そして「冬編」へ繋がり、輪廻の歴史が始まったと考えられる。しかし、アリス財団による人工レゾネーター計画は黒須玲奈が居なければ行われない。つまり、三千界切那がアリス財団によって生まれた人工レゾネーターの場合、『SILENTWORLD』の出来事は『ISLAND』の前の時代の出来事になってしまう。この場合、2015年の浦島に住む御原玖音ことリンネ・オハラの存在が居なくなっていなければならず、また本物の御原玖音の反対運動によって海上ステーションが建設されていないはずであり、また本土である宮浦と浦島が交流していないといった多くの矛盾が生じてしまう。つまり、三千界切那はアリス財団による人工レゾネーター計画で生まれたレゾネーターである可能性は低いものだと考えられる。

三千界切那が宗教団体によって生み出された、あるいは発掘されたレゾネーターである場合、三千界切那と黒須玲奈の出生は同じものだと考えられる。つまり、三千界切那の正体はナノマシン技術、あるいは遺伝子欠損を再生させる機関の技術、デザイナーズチャイルドなどの技術によって生み出されたレゾネーター遺伝子を持った超古代文明の人類であるものだと考えられる。

アリス財団の人工レゾネーター計画は、黒須玲奈がレゾネーター遺伝子のデータを手に財団を訪れたのが始まりであるが、このデータには三千界切那の遺伝子データも含まれていたものだと考えられる。つまり、サイレントキラーが三千界切那の外見と類似していたのは、サイレントキラーは三千界切那のデータをもとに造られたクローンであったからだと考えられる。

金城鈴

金城鈴と「セツナ」(三千界切那であるかは不明)の両者には、何かしらの約束が交わされている、あるいはセツナが誰かと交わした約束を金城鈴は知っているような言い回しをしている。また黒須玲奈に唆されたサイレントキラーが「アイランド」や「過去の遺産《オーパーツ》」といった世界の秘密を知っていることから、アリス財団は世界の秘密を知っているものだと考えられる。また、この星の約二万年周期に宇宙は関係ないため、超古代文明の遺産として人工衛星も衛生軌道上に残り続けており、西園寺グループ・CEOの西園寺暁もアリス財団に所属しているため、西園寺グループも世界の秘密を知っていると考えられる。つまり、アリス財団に所属する金城鈴は世界の秘密を知っており、三千界切那が伝承の切那である事を知っていたと考えられる。金城鈴が三千界切那に対して記憶が定着していないといった発言をしているが、これは身体に経験が刻まみこまれたことによって、記憶を思い出していない事を意味すると考えられる。

また「真夏編」において金城鈴が三千界切那を誰かと人違いしていたと発言をしているが、これについては三千界切那が、自分を誰かと金城鈴が勘違いしているのではないかと思い、三千界切那と金城鈴が押し問答をしたことで、結果的に金城鈴が押し負けたものだと考えられる。

そもそも「りんね」を意味するリーン・カーネーションというコードネームを金城鈴が自ら名付けたとするならば、自身が伝承の凛音の生まれ変わりだと信じ、御原凛音と同様に伝承の切那を探し求めていた可能性は高い。もしかしたら繰り返す輪廻の歴史の中で、金城鈴が「りんね」の少女だった歴史もあったかもしれない。

クロノス

クロノスと三千界切那が同一人物である場合、タイムマシンを手にした後にすべての「りんね」を救う為に三千界切那が過去へと遡った際に金城鈴と出会ったものだと考えられる。リーン・カーネーションのコードネームを持つ金城鈴もまた「りんね」の名を持つ少女の一人だとするならば、金城鈴も三千界切那が救うべき「りんね」のひとりとなる。また、金城鈴は羽鳥健人が時間を遡った事を信じており、信じていなければ自分はここにはいない事を語っていることから、金城鈴は過去へタイムトラベルした人物を知っているものだと考えられる。

また金城鈴はよく「シナリオ」という単語を使用しており、宗教団体を壊滅させたクロノスも「予言《シナリオ》」という単語を使用している。クロノスの予言と金城鈴のシナリオが同一であるとするならば、金城鈴にとってのセツナと宗教団体を壊滅させたクロノスは同一人物であると考えられる。また、三千界切那とクロノスが同一人物だとするならば、「予言《シナリオ》」とは過去に残したすべての「りんね」を救うための道標として三千界切那が残したものだと考えられる。つまり、金城鈴とクロノスの約束も「りんね」に関わるものだと考えられる。その為に三千界切那は宗教団体も利用していたが、シナリオが狂ったことによって人工レゾネーター計画が行われたものだと考えられる。

Prologue of midwinter

「Prologue of winter」と「Prologue of midwinter」を比較すると、三千界切那が自らの名前を覚えており、地の文において「未だ救われていない、最後の、少女の名を」と述べている事から、三千界切那はタイムマシンを無事に手にいれて「真夏編」から約二万年前のリンネ・オハラを除いたすべての「りんね」を救い終えていることが考えられる。しかし、三千界切那はタイムマシンを手にしてから、全ての「りんね」を救う前にもうひとつの長い旅を行っている。それはこの世界の不幸を振りまくことになった本当の原因を知るために、三千界切那が未来へ旅立つことになった最初の出発点へと遡ることである。

私の仮説が事実であるならば三千界切那の最初の出発点とは、西園寺グループとの出会いであり、三千界切那が生まれることになった起源でもある遺伝子欠損の存在に繋がります。三千界切那にとって、この世界を救う手がかりと、この世界の本当の不幸の原因は媒紋病にあるものだと考えています。媒紋病はX染色体の遺伝子異常が原因で発症した病であるが、X染色体の起源は46人目の宇宙人が不時着したことで45人目が46人目を補完したことによって誕生したものであり、この世界の不幸の始まりは46人目の宇宙人が月へ不時着したことが原因だと考えられる。つまり、媒紋病の真の原因は、45人目の宇宙人が46人目を補完するために生み出した機能が、浦島という特殊な閉鎖環境によって病として発症したものだと考えられる。

三千界切那は、自らの起源であるレゾネーター遺伝子と、媒紋病の原因である45人目の宇宙人、そしてこの世界の不幸の始まりである46人目の宇宙人ことルナウイルスを知って何を成したのだろうか。『ISLAND』や『SILENTWORLD』ではルナウイルスと人類は戦争の果てに共存はまだしていないことから、ルナウイルスとのファースト・コンタクトは『ISLAND』よりも更に先の未来であると考えらえる。そもそもこの事実から46人目が月に不時着している事実さえアリス財団および西園寺グループは把握していないものだと考えられる。ということは、三千界切那がこの世界の不幸の始まりの原因を知っていようとも、不幸の始まりを止めることは出来ないものだと考えられる。しかし、彼は媒紋病は遺伝子治療によって治せることを知っている。不幸の始まりは止められなくても、不幸そのものを止めることは出来るのだ。未来の知識を過去に持ち込むことで歴史は簡単に変えられる。クロノスと三千界切那が同一人物ならば、この世界を救う予言《シナリオ》は未来の知識そのものだったとも考えられる。

タイムパラドックス

三千界切那とクロノスが同一人物だと仮定すると、この世界の不幸の始まりを知った三千界切那は未来の知識と筋書といった予言《シナリオ》を残して、その後に全ての「りんね」を救うために旅立ったものだと考えらえる。では「Prologue of midwinter」の最後の「りんね」を救い終えたならば、三千界切那は何処へ向かうのだろうか。

彼の目的は全ての「りんね」を救い終えて「真夏編」の時代へと戻ることである。しかし、「Prologue of midwinter」から約二万年後は「真夏編」と同じ時間軸ではあるが、同一の世界ではない。彼が帰る世界は御原玖音が夢を追い、御原凛音が彼の帰りを待っているあの「真夏編」の世界なのだ。過去を変え、それでも「真夏編」に帰ってくる行為は、まさにタイムパラドックスであり、「Prologue of midwinte」にて最後の「りんね」を救い終えた後も、その矛盾を抱えながらも、彼は旅を続けていくことになる。

では三千界切那は、望む世界に帰ることは出来るのだろうか。答えは否である。時間膨張波の影響を受けない時間は未来から過去に流れている。本来の時間の流れに乗って過去へ時間を遡ろうとも、並行世界は生まれることはない。それは羽鳥健人が実証済みである。まさしくこの世界はCD-ROMではなく、書き換え可能なCD-Rなのだ。つまり、この世界は無数に存在しておらず、常にひとつだと考えらえる。それでも三千界切那は見つかることのない世界を探して旅を続ける。だけど、生きてさえいれば、諦めさえしなければ、もしかしたら──辿り着けるかもしれない。

もしも、三千界切那が奇跡的に「真夏編」辿り着けた場合、三千界切那という人間はタイムマシンを求めて冷凍睡眠装置に眠っている三千界切那と、全ての「凛音」を救い終えた三千界切那という二人がひとつの世界に存在しているというタイムパラドックスが発生することになる。この未来の自分が過去に存在している現象は「夏編」にて御原玖音が解説していたが、未来の世界の結果によって過去の世界が存在してるため、この時点で冷凍睡眠装置に眠る三千界切那を起こそうとしたり、未来に起きる出来事を変えようとしても変えることは出来ない。

全ての「りんね」を救い終えた三千界切那が「真夏編」に辿り着いたとしても、辿り着かなかったとしても、御原玖音は変わらずタイムマシンを開発するだろうし、御原凛音は旅館の女将になっているだろう。しかし、そこには過去の不幸は存在せず、浦島と宮浦は交流し、少女をはじめとした媒紋病患者は治療されていることだろう。



年表

三千界切那を宗教団体によって発見されたレゾネーターだと仮定して「Prologue of midwinter」の約二万年後を『SILENTWORLD』とする。またクロノスと三千界切那は同一人物であると仮定する。

『投票げぇむ』はどの時代での起こり得る可能性があるので、年表からは省く。

ルナウイルスは地球の約四万年周期とは関係のない月に存在しており、数億年分の孤独の記憶があるため、時代としては『ISLAND』と『SILENTWORLD』よりも未来となる。また人類と邂逅した後は共存の未来を進んでいることが示唆されているので、約四万年周期の歴史には含まないものとする。

「晩夏編」(TVアニメ版)は三千界切那が「冬編」に関する記憶を「夏編」よりも断片的に思い出していることから「夏編」から「真夏編」の間の時代であると考える。

ゲーム版の冬編は夏編の約二万年前であり、夏編の二万年後は正確には描写されていない。ただし、全て「りんね」を犠牲にした歴史を辿っているので判りやすいように「夏編・凛音編」「冬編」と表記する。

『ISLAND』は「Re:」END、『ひまわり』は「西園寺明香」ENDを正史とする。

年表は切那の経歴と作品名を中心に記述。また上記で考察している内容と『ISLAND 解体新書』と『ひまわりプレミアムファンブック』に記述されている一部内容は割愛しています。各自で補完してください。

アカシックレコードから世界が再生される(輪廻転生)
時間膨張波発生。ビックバンによって宇宙誕生
外宇宙から46名の宇宙人が地球に飛来。1名が月へ不時着
人類誕生
文明が発展。レゾネーター遺伝子を持った人類誕生(男と黒須玲奈)
ハングにより男と黒須玲奈は眠る(始まりの出発点)
──約二万年後──
宗教団体により遺跡から男を発掘(第21次人工レゾネーター計画)
男は西園寺グループに関わる
男は西園寺グループが開発した冷凍睡眠装置の実験体となる
──約二万年後──
冷凍睡眠装置から目覚めた男はリンネによってセツナと名乗る(始まりの「りんね」)
セツナとリンネが冷凍睡眠装置にて眠る
──約二万年後──
セツナが御原凛音によって三千界切那と名乗る
【ISLAND 夏編】
──約二万年後──
【ISLAND 冬編】
──輪廻の歴史を繰り返す──
【ISLAND No Man’s Summer】
──輪廻の歴史を繰り返す──
【ISLAND 冬編】(ゲーム版)
──約二万年後──
【ISLAND 夏編・凛音編】(ゲーム版開始)
──輪廻の歴史を繰り返す──
【ISLAND 夏編】(TVアニメ版 Stage1~8)
──約二万年後──
【ISLAND 冬編】(TVアニメ版 Recursion1~2)
──約二万年後──
【ISLAND 晩夏編】(TVアニメ版 Jump1~2)
──約二万年後──
【ISLAND 冬編】(最後の「りんね」)
──約二万年後──
【ISLAND 真夏編】(ゲーム版 「Re:」END)
切那が冷凍睡眠装置にて眠る
量子暗号の論文が発表。タイムマシン完成
切那が始まりの出発点へと遡る
──数十万年前──(タイムマシン使用)
切那がこの世界の不幸の原因を知る
すべての「りんね」を救いに旅を続けていく
切那が未来のために予言《シナリオ》を残す
──全ての「りんね」を救う旅を続ける──(冷凍睡眠装置使用)
最後の「りんね」を救いに行く
【ISLAND Prologue of midwinter】(最後の「りんね」)
「真夏編」へと帰るために旅を続ける
──約二万年後──
【SILENTWORLD】
【こもれび】
人類とルナウイルスが邂逅
【かげろう】
【ひまわり 2nd episode】
【ひまわり 1st episode & 3rd episode】(「西園寺明香」END)
人類とルナウイルスが共存する
──???年後──
アカシックレコードの再生が停止される
時間膨張波停止。宇宙そのものの時間が遡る
アカシックレコードから世界が再生される(輪廻転生) 

あとがき

1999年8月15日。
それは磁気嵐が発生した日。
それはみずがめ座δ流星群が観測された日。
それはクロノスが宗教団体を壊滅させた日。
それは羽鳥健人が生まれた日。
それは黒須玲奈が眠りについた日。
そして三千界切那が目覚めた日。
多くの因果が絡まりあった日──それが本日8月15日です。

『ISLAND』の考察記事を執筆し始めたのは2015年5月でした。それから約二年ほど考察を書いていましたが、うまく自身で納得することが出来ず書いては消してを幾度も繰り返していました。そんな時『ISLAND アニメ化記念版』が発売され、それに設定資料集「ISLAND 解体新書」がついてくるとのことでしたので、これを期に本格的に執筆をしていこうと思ったわけです。

序文でも語りましたが、今回の記事において意図的に書かなかった内容があります。例えば御原典正の「切那は死ななければならない」の真意とは何だったのか。アイランド・ユーラシアにおけるオハラ家の使命とは。三千界切那と御原切那は別人なのか。偽りの身分を騙っていた者達。『ISLAND』単体の年表など。『ISLAND 解体新書』にてほぼ明かされています。もしもまだ購入を検討していない方は是非購入してみて下さい。そして描き下ろし小説「No Man’s Summer」を読んだ後に、この記事の【御原凛音】の項目を読んでみてください。あなたの価値観を覆すことを約束します。

ごぉ氏のシナリオを読んでいて、性行為による種の存続というのは一貫したテーマとなっているのだと感じられます。子孫を残すことの意味、それは滅びからの逃避であり、その為に命を繋いでいく。そこに種族や年齢は存在し得ず、親から子へと受け継がれていく。それは遺伝子でもあるし、子へ託した想いと様々です。いつか来る滅びに対して、それでも抗う。抗い続ける。
そのために、生命は生きるために生きている。

以上で私の『ISLAND』の考察は終わりとなります。
長文となりましたが、ここまでの閲覧ありがとうございました。


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4 件のコメント :

  1. 考察読みました。PS4でisland単体のプレイだった為、知識の補完として非常に参考になりました。
    一つ気になったのが、御原凛音の項目の内容です。
    私は設定資料を読んだわけではないので、そこに書かれている内容についてはよくわからないのですが、「軌跡と奇跡END」は夏編と真夏編でそれぞれ文面が異なります。
    夏編は考察に書いてある内容の通りだと思いますが、真夏編の「あの娘」に関しては文面から、玖音とセツナの娘、つまり凛音の妹になるのではないかと思います。セツナの記憶も取り戻してるような発言も見られるので、真夏編の「軌跡と奇跡END」は、私はある意味一番のhappy ENDなのではないかと思っています。

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    1. 感想ありがとうございます。
      真夏編の「軌跡と奇跡」ENDは御原玖音と結ばれる解釈と御原凛音と結ばれる解釈の二通りに分ける事ができます。
      前者の場合は姉とは御原凛音であると考えられますが、後者の場合は姉は夏編「軌跡と奇跡」および小説で登場する少女だと考えられます。また「小さな宝物たち」という文脈から、24歳を超えている御原凛音の事を考えると後者である可能性が高いものだと考えられる。
      二つの「軌跡と奇跡」ENDは真夏編「凛音」ENDのエピローグだと考える事もでき、凛音かリンネのどちらを選択し、どちらのエンディングを選ぶかはごぉ氏曰くプレイヤーに委ねられているので、どちらのエンドを最終的に選ぶかは自由です。それを考慮して私個人としては自らの考察が正しいものであるという自惚れがある事から御原玖音と三千界切那の歩む道が重なった「Re:」ENDが一番のハッピーエンドだと感じています。

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