【雑記】2020年にTVアニメ化する『無職転生』について語らせてくれ



「小説家になろう」というサイトがある。

いまではその読者層が良い意味でも悪い意味でも知られているだろうが、多くの作家を輩出し、幾つもの作品を映像化してきた小説投稿サイトのことだ。

「なろう系小説」と呼ばれるようになる異世界転生・転移モノのテンプレートが形作られる以前の黎明期の有名作品には『ログ・ホライズン』『魔法科高校の劣等生』などがあげられ、BBS系のSSや、やる夫スレからの流れで「小説家になろう」の読者となった当時を思い出すかぎり、いまほどランキングに異世界転生・転移モノは増えていなかった。
※異世界転生・転移モノがランキングを網羅している状態ではなかったというだけで、異世界転生・転移モノは人気ではあったが現在のようにジャンルが隔離されるほどではなかった。

しかし、ある時期を境に異世界転生・転移モノは急激に増えることとなる。ひとつの作品がランキングの一位を独占し、多くの作家の卵(ワナビ)が影響を受けて我も我もとあとに続くように作品を生み出し、またそれを読んだワナビがまたオマージュ作品を生み出し……。そうして異世界転生・転移作品が爆発的に増えていったのだ。

そう。いまの「なろう系」といわれる作品群の先駆者。
それが『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』(以下、無職転生)である。

「無職」というマイナスなイメージ

この『無職転生』。特徴的なのがこのタイトルだ。
無職という単語自体が、あまり世間一般では好かれる単語ではないし、惹かれるものでもないだろう。

この作品の主人公は、自他共に認めるクズだった。
そんな主人公がやっとの間際に後悔し、もしも人生をやり直すことが出来たならと願い、ある原因により六面世界でルーデウス・グレイラットとして転生する。
そうして二度目の生で新たに得た家族、友人、師と過ごし、自らを改め、慢心することなく努力を積み重ねていく。『無職転生』は読者の主人公の評価が最低から始まるのだ。だから序盤で振り落とされやすい。

だがそれを乗り越えた先に、その過去があったからこその素晴らしい展開が待ち受けている。

「家族」をテーマとした物語

『無職転生』は家族を始めとした人との絆を主軸にして物語が紡がれる。

他人や果ては家族にさえ興味がない穀潰しは、最終的には家族に見捨てられた。
そんな前世は後悔だらけだった二度目の生だから、他者の後悔の感情を誰よりも感受でき、どんな対応をしてしまったら失敗してしまうのか理解できてしまう。それでも、どれが正しいことなのかはわからないけれど、それでも寄り添い、前世とは違い心の底から家族を守るために行動していくのだ。
家族に関わるエピソードはどれも素晴らしく、私は読むたびにほぼ全てで涙腺が刺激されます。

またなろう系によくある俺TUEEEで敵を倒してスカッっとしたりするのはあまりなく、ひとりではどうにもできない試練に幾度もぶつかっていく。そうして周りに協力を頼みながら人らしい失敗をしながらも、試行錯誤のなかで確かな成功を収めていく。

そんなエピソードを通して、読者は最低だった主人公の評価は、最高へと変わっていくのだ。
まあ師のパンツ御神体を長年保管したり、セクハラしたりとスケベなのは終始変わらないんだが……(笑)

「ターニングポイント」

作品を読んでいると展開に変化がない。あるいは類似した設定で先が予測できてしまってつまらないといった読んでいて退屈することがあるかと思います。

この『無職転生』には、そのようなことはありません。
予測不可能な展開の連続である"それ"は突然起こります。それが「ターニングポイント」です。

『無職転生』を薦める時は「最初の『ターニングポイント』までは読んでほしい」と言っています。
そこから物語の方向性は大きく転換していき、面白さに深みが増していきます。

また第四の「ターニングポイント」から、大きく世界は広がり、主人公にとっての敵が明確になっていきます。その敵と主人公の決着も読者が納得できるうえで、他作品では見られない決着のつけ方をしている。

節々から風呂敷が広がっていくのを感じとりながらも、設定に破綻がなく、最初からしっかりとしたプロットが組まれたうえで進んでいることを意識させられ、読み進めるたびに作者である理不尽な孫の手先生に驚嘆させられます。

ついに来年TVアニメ化

その『無職転生』が! ついに!! 来年にTVアニメ化するのだ!!!!


「アニメ化されるまで長かった」とよく言われているが、どれだけ遅かったのかと知らない人に説明すると、1巻の刊行が『Re:ゼロから始める異世界生活』同日であり、当時の人気は『無職転生』のほうが高かったといえば判りやすいだろう。──『Re:ゼロから始める異世界生活』とか、当時はループ設定や主人公の性格から書籍化不可能っていわれてたのに、いまじゃカルト的人気を博してると考えると感慨深い。


約半年前。アニメ化が決定され、先日、ついにティザーPVが公開されました。
しょうじきにいうとね、すごくハードルを下げていました。
肩透かしを食らい、好きが嫌いに反転するのを恐れていたからです。

だから、恐る恐るティザーPVを見たら、その映像美に感動しました。

「なんだこの動き!? しかもなんだこの壮大な楽曲は!!」

キャラクターデザインも作画も文句なしです。映画かよ。

『無職転生』は大きく幼年期、少年期、青少年期、青年期に分けられ、ルーデウス・グレイラットの半生を描いています。

ティザーPVを見たところ、少年期の終わりである書籍六巻までを2クールで放送するものだと推測される。
もしも円盤が売れて二期へと続くなら、青少年期が二期、青年期が三期。合計6クールで最後まで制作されたら良いなぁ……。

さいごに

web原作版は「小説家になろう」で公開されていますが、やはりオススメは書籍版です。
シロタカ先生の挿絵が追加されているのはもちろん、web版から多くの改稿や新たな物語が追加されています。


コミカライズ版は三種類あって、web版準拠のコミカライズ。ヒロインのひとりであるロキシーの外伝4コマで本編が進んでいくモノさえあります。
「小説はあまり……」という人はweb版準拠のフジカワ ユカ先生のコミカライズ版を読むのも良いかもしれません。






Web原作は2015年の時点で既に完結しており、現在書籍は22巻まで刊行されている。
 このまま行くと書籍最終巻は約25巻であり、ちょうどアニメが放送している頃だろうか。

すこしネタバレが含まれるが、実は『無職転生』は、六面世界の歴史──その本筋に入るための前日譚にあたる。あくまで『無職転生』はルーデウス・グレイラットの物語であって、それ以上の物語は描かれないのである。

……ということは、だ。
『無職転生』のTVアニメが放送している期間で、『無職転生』の最終巻が発売され、同時に『無職転生』と地続きな新作を期待してしまうのは、まあ自然の摂理というものなのだ。

来年の2020年の『無職転生』のアニメと、書籍の展開がこれからどのようになるのか楽しみでしかたない。


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